こんにちは、Beatrust で PdM をしている堀口です。現職につくまで、UX デザイナーとしてたくさんのインタビューやヒアリングを実施してきました。
#1 Aya Horiguchi : UX デザイナー、プロダクトマネージャーに転身 - Interview with Beatrusters|Beatrust on note|note
最近、弊社のプロダクトに関するユーザーインタビューを実施したのですが、「これって社員の誰でもできるようになった方がいいよね」という話が出ました。そこで、初心者でも経験者でも、改めてインタビューする際のコツや注意点がまとまってた方が実用的なのでは、いう考えから作った資料をもとに記事を書いてみました。 少しでも読んでくださる方々のお役に立てれば幸いです。
- 誰のためのどんなガイドか
- インタビューの目的
- インタビューの種類
- インタビューのやり方(簡易版)
- インタビューのコツ
- インタビューの注意点
- Beatrustで行った実際のインタビューとその活用事例
- 最後に:インタビューは場数を踏んだら誰でもできるようになります
誰のためのどんなガイドか
誰に インタビューは初めて、もしくは数回したことあるけど、なんとなくやってこられた人を意識して書いています。
どんなガイドか インタビューをする際のコツや注意点を数点まとめたもの。インタビューを始める際にクイックに振り返れるポイントを列挙。
インタビューの目的
結論から言うと、「本音を聞き出す」ことです。 ユーザーの行動の裏にある、「こう思われたい」「こうなりたい」という、時には全く理論的ではない、本心を聞き出すためにインタビューは適しているツールです(WHY)。本音を言い換えると、願望や欲、といってもいいかもしれません。一般的に「定性調査」に分類されます。 インタビューとよく比較されるウェブなどでのアンケートは、ユーザーの属性的な特徴や行動の確率を調べるために適しているツールです。対照ターゲットのマスはどういった行動を取るのか、どんな選択を選びがちなのか、を知ることができます(WHAT)。一般的に「定量調査」に分類されます。
インタビューの種類
定性調査の1つであるインタビューにはいくつかの種類があり、上の図はインタビューの形式と目的に分けて書いています。分け方にはいろいろあるので、興味のある方はぜひ調べてみてください。 個人的に最も多く実施してきたユーザーインタビューは「半構造化」インタビューで「検証型」が8割、「探索型」が2割くらいのイメージです。冒頭で書いたインタビューは半構造化インタビューでしたが、検証型と探索型の両方を実施しました。
インタビューのやり方(簡易版)
やり方はそれこそ千差万別なので、細かい説明は省きますが、個人的なこだわりを記載します。プロフェッショナルのインタビュアーに依頼した際の流れはリクルーティングや分析の段取りがもう少し長くなるので、あえて「簡易版」と記載しています。
- インタビューで達成したい目的は必ず文章で書き出します。大きなテーマとより粒度の細かい質問や検証点を書き出します。あまり数は多くなく、最大でも5つくらいがあとからまとめやすくていいですね。
例) 大きなテーマ:
社会人 2 年目から 5 年目の貯金に対するニーズを発掘する
検証点:
・ユーザーは車や旅行など、物理的なものを消費したいニーズは少ないのではないか?何にお金をかける価値があると思っていそうか?
・貯金のスタイルは定期預金が多いのではないか?その理由はなのか?
・年収や業種によって貯金額が大きく違うのではないか?
聞きたいことを中心に、設問を設計しましょう。30 分のインタビューでしたら、目安の設問数は最大でも 5 問です(1 問 6 分)。少ないと感じるかもしれませんが、設問数が多すぎて、聞き切ることが目的になってしまうとインタビュアーの焦りが被験者に伝わります。絶対にこれだけは聞きたい、と思う設問の優先順位をつけて、時間のあまり具合によってその他の質問をしていく、ということをおすすめします。
インタビューが 1 件終わったら、必ずその直後に振り返りを実施しましょう。記憶が新しいうちに、検証したかった点の答えを書き出します。複数人でインタビューしていた場合は、1 人に任せず、その場にいた全員で話しながら振り返りをすることをおすすめします。何件かまとめて振り返りを実施しようとすると、記憶が曖昧になったり、誰が何を言ったかがごっちゃになってしまうリスクがあります。
インタビューのコツ
5 つのコツの中で、「バイアスを捨てる」「オープン・エンデッド・クエスチョン」は頻繁に言われていることかと思います。補足として、インタビュアーとしてバイアスは必ずあるものですし、完全にゼロにすることは不可能ですが、「バイアスをなるべく捨てよう」という意識を持っているかどうかで、だいぶ質問の深掘りの仕方が変わってきます。残り 3 つのコツについて、それぞれ少しずつ説明させてください。
目的を説明する:インタビューの目的を説明すると、被験者は安心して答えてくれます。「〇〇に困ってて、利用者様の率直な意見が聞きたいんです」というふうに素直にこちらの悩みを打ち明けるのも一つの手です。以前、証券に関するインタビューで被験者の方が「証券のことほとんど素人なんですが、私なんかでいいんでしょうか…?」と質問されました。インタビューを何かのテストだと思われるケースも多いようで、その不安を解消しないままインタビューしても、本音は聞き出せませんよね。なので、インタビューが開始する際に改めてお伝えすることはおすすめです。
シチュエーションを説明する:これは、「検証」が目的の場合は特に意識していただきたいコツです。例えば、構想中の機能のプロトタイプがあったとしましょう。被験者がターゲットユーザーであることが前提ですが、この画面を「車の中で、商談の合間に見るとしたら、どうですか?」とシチュエーションの説明をした方が、的確なフィードバックが得られます。ただ、注意すべき点は被験者の実際のシチュエーションからあまりにも乖離していると、想像の域を出なくなってしまいます(30代の被験者に「60歳になった時の週末の過ごし方を教えてください」と言っても答えづらいですよね)。あくまでも被験者が実際に経験した、もしくは経験しうるシチュエーションを描いてあげるようにしましょう。
ストーリーを語らせる:被験者の方によって、インタビュー設問をいくらオープン・エンディッドにしても一問一答になってしまう場合があります。特にインタビューが始まってすぐは緊張しているので、最初は答えやすい質問やアイスブレイク(例:「ご出身はどちらなんですか?」)に時間を使いましょう。後半で場が和んできたら、答えに対して踏み込んでいくチャンスです。次の「インタビューの注意点」でも説明しますが、被験者の方の選択や行動の「意味を説明してもらう」「背景を説明してもらう」「その当時思った/考えたことを振り返ってもらう」「時系列で説明してもらう」など、1 つの答えにまつわるストーリーを語り始めてもらえるように待ちましょう。注意すべきは、ストーリーが脈絡なくても、順序立てて話されていなくても、突っ込まないようにしましょう。記憶を辿りながら話す場合は、特に整理して話すことが難しいので、その点を指摘すると話してもらえることも話せなくなってしまいます。
インタビューの注意点
インタビューする際に、私も気をつけている注意点5つを挙げています。
まず初めに、5点目から触れると、「矛盾を指摘しない」のは前項で記載している「ストーリーを語らせる」点に関連していますね。また、矛盾という点では、(あれ、インタビューの冒頭ではこう言ってたけど、今はまったく違うこと言ってるな…)と気づく瞬間があります。この矛盾にインサイトが隠れているかもしれません!私を含む多くの人間は、一般的な常識を口ではいうものの、実際に起こしている行動がそれに則ってないことがよくあります。この言動と行動の乖離に「本当はこうしたい」が隠れている場合があるので、あとからこの矛盾を通してインサイトを推測してみることがインタビューの面白さだったりします。
また、この内容の社内勉強会を実施した際に「沈黙を恐れない」点に関して、以下のような質問がありました。
相手が黙っちゃうと、心配になってしまって、『例えば〜』と事例を話し始めちゃうのですが、それって相手にバイアスを与えちゃうことになるんでしょうか?
とても良い質問ですね。そうしたい気持ちは痛いほど分かります。そういう時は、まず相手が質問をきちんと理解しているかどうかをまず確認することをおすすめします。質問を理解している上で、沈黙している場合は、答え方を考えていたり、記憶を思い起こしている時間なので、グッと発言を我慢して答えを待ちましょう。
Beatrustで行った実際のインタビューとその活用事例
冒頭で書いた実際のインタビューについて少しだけ触れておきます。当時、Beatrustではあるターゲットユーザーに対して、特定のニーズがあるのではないか?という仮説から、さまざまな機能のアイディア出しを行っていました。当時、思いついたアイディアは軽く10を超えていたと思います。
それらを全て並行で押し進めるのは工数とスケジュールの観点で不可能であり、且つ、改めて「そのターゲットユーザーの具体的なニーズはどんなものか?(探索型)」「考えついた機能は果たしてそのニーズに応えられているのか?(検証型)」という2つの方向性で検証をしたほうが良い、という点に行きつきました。両インタビューとも、半構造化された形式のインタビューを実施しましたが、後者については実際の画面プロトタイプを作成して、被験者の方々に見せながら応えてもらいました。
詳細は省きますが、結果的にインタビューで分かったことを書き出していくと、 前者の「そのターゲットユーザーの具体的なニーズはどんなものか?」という点においては、役職・年齢・経験・環境がバラバラでも、シチュエーションの説明をした上でニーズがあった領域は2つに絞られました。興味深かったのは、今まで社内で重要視していた領域は、実はそのシチュエーションではあまり重要視されていなかった点で、これは目から鱗でした。
後者の「考えついた機能は果たしてそのニーズに応えられているのか?」においては、複数ある機能アイディアのうち、明確な強弱がついたことです。具体的には、6つほどあったアイディアのうち、2.5個ほどは明確に「ニーズに応えられていそう」と思えるフィードバックがありました。また、それ以上になぜそのニーズに応えられていそうか、という点がはっきりし、これはアイディアの有用性を社内外に説明する上で、非常に説得力が増すという意味で非常によかったと感じています。
後者のインタビューは、私ともう1人で手分けして実施したのですが、それぞれのインタビュー結果を突き合わせて、結論を導き出すプロセスも有用だったと感じました。文章で大まかな方向性は共有しつつも、最後に口頭で感じたことやその強弱を共有しながら、2人の意見をきちんと取り入れた結果にまとめられたと思います。このインタビュー結果を自分の言葉で、自分ごととして、伝えられることが、誰でもインタビューできるようにする理由に寄与します。
最後に:インタビューは場数を踏んだら誰でもできるようになります
いかがでしたでしょうか?ユーザーインタビューは一見プロフェッショナルしかできない、と思いがちですが、目的やコツを把握していれば、誰でもできるようになります(もちろん、プロフェッショナルのインタビュアーが行う良さもたくさんあります)。
できるようになるにはとにかく場数を踏むことです。インサイトがうまく拾えない、会話がスムーズに進まない、結局時間の無駄だったインタビューもあるのが現実です。でも、そういった「うまくいかなったインタビュー」から次はどうすればいいのか、を考えながら数をこなしていけば、誰でもユーザーの声を拾えるようになると信じています。Beatrustでも、誰もがユーザーインタビューができることを目指していきたいと思います!
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
ぜひ「やり方」「コツ」「注意点」を参考にインタビューを実施してみてください!フィードバックやご質問もお待ちしています。
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